企業は、財産である人的資源を最大限活用するために、その従業員の健康リスクを排除することは、経営面にも大きな効果があります。従業員の禁煙対策や受動喫煙対策を実施すべき理由があります。
①健全な労働力の確保
喫煙による弊害は思った以上に深刻です。ご存じのように、がんリスクが高まるだけでなく、日常生活でも目覚めの悪さや腸の活動にも影響してきます。
禁煙対策は、喫煙による疾病を予防し、従業員の健康的な生活へとつながり、健全な労働力の確保につながっていきます。
②生産性の向上
たばこに含まれるニコチンが原因でニコチン中毒になると、勤務中であっても30分もすると体内のニコチンが切れて、イライラや落ち着かない状態などの禁断症状が現れます。
ニコチン中毒から従業員を守ることは、生産性や創造性の向上という観点でも重要です。
③従業員のモラルの向上
業務時間中の喫煙について、非喫煙者から疑問の声が上がるという状況は多くの企業であがっています。このような事態を打破するために、経営層からの号令で会社として禁煙対策に取り組むことは、従業員満足の向上と、それによる愛社精神や士気の向上につながっていくと考えることができます。
国内企業の取り組み事例
健康経営に後押しされる形で、様々な企業が「受動喫煙対策や禁煙施策」に乗り出しています。
■株式会社LIXIL
一般平均と比べて喫煙率の高かったLIXIL 平均19.5%(男性43.2% +11.0%) (女性16.3% +7.9%)
2022年後までに12.0%に低下させる目標を掲げている。
従業員への注意喚起や制度周知のために、健保発行の機関紙の中で禁煙特集を実施しました。
①禁煙専門講師による禁煙セミナーの開催
(内容)禁煙の裏技教えます!(我慢の禁煙さよなら)、思わずビックリ!受動喫煙の影響
②禁煙サポート制度 ニコチンガム(ニコレットクールミント48個入)などの禁煙補助剤を含む「禁煙スタートキット」を希望者に提供し、禁煙チャレンジを応援
禁煙成功者の生の声
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実際に禁煙してみて、「無理せず、気軽に」が一番だと思いました。禁煙したおかげで、朝起きた時の空気がおいしい!
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禁煙すると、とにかく体調がよくなります。3日でも1週間でもチャレンジしてみてください! 今までとは違ったことが経験できるはずです。
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食後の一服の習慣をなくすことがカギでした。当初は吸いたくなりましたが、ここをしのぐとあとは問題なく禁煙できました。周囲の応援が励みになりました。
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禁煙補助剤を使用し、苦しさや辛さをさほど感じることなく成功しました。今まで煙になっていたタバコ代が形のあるモノになって残り、禁煙の効果を実感!禁煙することによって得られるメリットは何かを目的にすると、楽しんで禁煙できました。
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タバコを吸うための時間やお金や手間をとられる事がなくなりました。禁煙は一大決心だと思いましたが、大した事はありません。習慣が体からなくなるまでの我慢です。禁煙補助剤を利用し、気軽にトライしたらよいと思います。
http://www.lixilkenpo.or.jp/member/11_kenkou/2013no132/P10-11.pdf
■株式会社リコー
リコーは2015年、社内での喫煙及び就業時間内での喫煙を全面的に禁止することをいち早く発表。すべての敷地・建物内を対象範囲とし、リコー関係者だけでなく各社・各事業所に来所される全ての方が対象という徹底ぶりです。
当然、勤務時間内の全面禁煙化に関しては、外出先、出張先、移動中を含めたあらゆる場所での喫煙を対象と定めています。
(具体的方策)
①産業保健スタッフによる支援(面談、セミナー)
②総務との連携による情報発信(ポスター・パンフレット、デジタルサイネージ)
③安全衛生委員会での周知
健保としての支援
禁煙チャレンジプログラムの実施
・禁煙外来治療費補助
・禁煙補助薬購入費補助
リコーグループ全体で10708名の喫煙者中 731名が禁煙チャレンジ
110名が禁煙に成功した。
http://www.tobacco-control.jp/documents/1512-Richo-OpenData-small.pdf
■損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険株式会社
WHOが主催したイベント「Revolution Smoke-Free(禁煙革命)」に招待され、社員の禁煙・受動喫煙防止を先立って達成した企業としてその取り組みを発表しました。
社員に対する禁煙サポート
国立がん研究センターが監修した特別なプログラムに基づき訓練さ
れたカウンセラーによる禁煙カウンセリングを希望する社員に対して行う。
喫煙率を 2020 年までに 12%以下(現状 20.8%)になるよう、禁煙の模範企業として受動喫煙対策に積極的に取り組む。
<受動喫煙対策>
①全国 131 カ所の営業拠点を含む全社の占有スペースを終日禁煙
②社員の禁煙治療費の補助 医療機関に通院し、禁煙治療を行った社員に健保から補助金を支給
③社員への禁煙セミナーの開催 喫煙社員向けに、健康への影響、受動喫煙などについて研修実施
④e-ラーニングで禁煙セミナー公開 ③について、全国の社員向けに社内イントラで動画配信
⑤禁煙カウンセリングの実施 国立がん研究センターが監修した特別なプログラムに基づき訓練されたカウンセラーによる禁煙カウンセリング
http://www.himawari-life.co.jp/~/media/himawari/files/company/news/2018/a-01-2018-08-01.pdf
■ユニ・チャーム株式会社
『就業時間内“禁煙”』を宣言し、役員・執行役員の全員禁煙を皮切りに、管理職を含めて禁煙を推進。外出先・移動中など、勤務場所に関わらず就業時間内の禁煙を徹底。
喫煙は、日本の死因順位の第1位:悪性新生物、第2位:心疾患、第3位:脳血管疾患に深く関係しおり、受動喫煙により年間6,800人が死亡しているという推測も厚生労働省から発表されている。労働組合側と共同で討議し、活動時間の大半を占める就業時間を全面禁煙とし、禁煙・減煙につながる環境づくり(喫煙習慣の改善)を推進することにした。
http://www.unicharm.co.jp/company/news/2014/1195728_3930.html
■株式会社デンソー
禁煙対策を含めた健康経営計画について、現状分析、組織体制や長期計画、キャンペーン概要等を可視化した資料を作成。
就業時間内に安価な費用で受診できる禁煙外来を設置
卒煙キャンペーンの実施
狙い:喫煙率の減少
参加者数1,081人(12-14年):禁煙成功率 30%
■シャープ株式会社
全国に事業所を構えるシャープにおける社内禁煙の取り組みについて、禁煙ルールの策定から各種取り組み、禁煙実施後の身体的・精神的影響などを、産業医からの視点という形で記事化。
健康管理室で安価に禁煙補助薬処方
禁煙後のメンタルヘルスサポート
https://www.japan-who.or.jp/library/2011/book4506.pdf
■ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社
全世界のグループ企業共通で取り組む「職場禁煙ポリシー」。98%を超える職場が職場禁煙ポリシーを実行している。
日本のジョンソン・エンド・ジョンソングループにおいても、2007年の職場禁煙ポリシー実行にあわせ、ビル敷地、オフィス内、社用車、会社主催のイベントなどでは時間を問わず全面禁煙とした。また、所定の労働時間中は社内外を問わず禁煙とする「所定労働時間内禁煙」を採用し、受動喫煙を含めて、従業員を喫煙による健康被害から守るために禁煙キャンペーンや禁煙サポートプログラムを実施。
http://www.jnj.co.jp/group/environment/no_smoking_policy/index.html
■株式会社KSK
健康経営宣言を掲げ、2015年から全従業員における喫煙者ゼロを実現。「健康経営優良法人(ホワイト500)」にも2年連続で認定。経済産業省と日本健康会議が共同で選出する「健康経営優良法人(ホワイト500)」にも3年連続で認定された。
http://www.ksk.co.jp/white500/
まとめ
会社での生産性向上、人的資源の安定確保に会社を上げての禁煙指導はきわめて有効です。受動喫煙防止法が施行された今、社内上げて禁煙を勧奨する時期にあるのではないでしょうか?
非喫煙者、嫌煙家ラディアンでした。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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