新型コロナウイルス感染症の初期症状は、発熱、咳、倦怠感など通常の風邪やインフルエンザと区別がつきにくいようですね。
中国から北米放射線学会にコロナウイルス肺炎のCT所見に関する研究論文(英語)が発表されています。
2020年2月13日付電子版
治療によって回復された患者さん21名に限定し、重症で人工呼吸器を装着された方々や酸素療法が必要な人、酸素飽和度が室内気で90%未満の人は含まれず、比較的軽症の肺炎患者さんに限られた知見です。
対象となった人は21名で、25歳から63歳、発症してからの期間を4つに分けています。
原文はこちら→この論文に限ってはフリーアクセスです(Time Course of Lung Changes On Chest CT During Recovery From 2019 Novel Coronavirus (COVID-19) Pneumonia)
結局のところは、新型肺炎はCTでは確定診断はできない。
コロナウイルス感染症のうち、熱や咳の症状を有する患者のうち約8割は快方に向かい、2割は肺炎に進行する可能性があるといわれています。
ただ、肺炎から回復、退院される場合でも結構長く回復にかかるということなのでしょうね。
もちろんCTだけでは、コロナウイルス感染症と確定診断ができません。
コロナウイルス感染症ではないかと疑ったら、2020/3/3現在は日本では、保険所が必要と認めた方だけ、検体が各機関に送られて確定診断のためのポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)法で陽性か陰性かを診断されます。
2020年2月17日に開催されました新型コロナウィルス感染症対策専門家会議では、患者の受診時期について以下のような提言がなされました。
- 発熱37.5度以上が4日続いた場合、
- 高齢者、糖尿病、心不全など持病がある人では、発熱37.5度以上が2日続いた場合、
- 強いだるさ、息苦しさがある場合にはすぐに、
全国各地の保健所に設置されている帰国者・接触者相談センターに相談する。
しかし、インフルエンザウイルス感染症の診断キットはたいていの内科のクリニックや病院にはおいてありますので、私見ですが、38度を超える発熱や強い倦怠感があれば、まずはインフルエンザウイルス感染のチェックをしてもらうべきとは思いますね。
多くの風邪はウイルス感染で、風邪薬は症状を抑えるために処方されるものです。そういう意味では風邪にも特効薬はないともいえます。
論文の中身が気になる人は読んでください(CT所見の時期ごとの特徴)
(前提として 知見には限界があると中国人の著者はいっています)
この論文には限界があります。
- 治療によって回復された患者さん21名に限定
- 重症で人工呼吸器を装着された方々や酸素療法が必要な人、酸素飽和度が室内気で90%未満の人は含まなかった
- 比較的軽症の肺炎患者さんに限られた知見
この方たちは平均約17日で退院したそうです。もちろん中国と日本では環境や治療法の違いもあるかもしれず、そのまま日本人に当てはまるとも限りませんが、知識としては、特に医療者は持っておいたほうがよさそうですね。
対象となった人
21名で、25歳から63歳、症状が出てから4つの時期に分けてCTを撮りながら、所見の経過を分析しています。
発症からの時期と画像所見(あくまでも回復した方たちの経過)
(CT画像は原文より転載しています。)
①第1期(発症後0~4日)では、 GGOまたは一部の人は異常なし
第1期(発症後0~4日)では、 GGO(ground-glass opacity:すりガラス影)が主な所見で、肺下葉の胸膜下にみられる傾向にあったそうです。また、4例では、この時期に異常所見は見られず、5日目以降に出現したそうです。
②第2期(発症後5~8日)は両側の肺に広がっていく
第2期(発症後5~8日)では、陰影は両側肺野、多葉性に拡がり、GGO、crazy-paving pattern(すりガラス影内部に網状影を伴う所見)、consolidation(浸潤影)を呈するそうです。ただしこんな肺炎はざらにありますので、これだけで新型コロナとは診断できませんね。
③第3期(発症後9-13日)は濃い影になる
第3期(発症後9~13日)では、濃い浸潤影が主体になるようです。これが両側の肺にひろがれば呼吸もつらくなりそうです。
④第4期(発症後14日以降)
第4期(発症後14日以降)では、濃い浸潤影が次第に吸収されてスリガラス影に変化しますが、crazy-paving pattern(すりガラス影内部に網状影を伴う所見)はみられなかったそうです。
まとめ
この報告から学べることと注意点
①比較的ゆっくり進行する
回復者に限った知見ですが比較的ゆっくり肺炎が進み回復まで2週間以上かかるようです。
②両側の肺が侵される
片方の肺だけひどい肺炎になることはあまりなさそうですね。しかし、ほかのウイルス肺炎でもこんなことは良くあるような気がしますね。
③発症初期には肺炎像がなくても後から肺炎像が出てくる場合がある
レントゲンが最初きれいなひとでも4日に一回程度はレントゲンで経過を追う必要はあるでしょうね。
(注意点)
CTはあくまでも肺炎の有り無しがわかるだけで確定診断はできない→PCRは保健所の指示で行う
我れ先にCTを撮影してもらおうとすると、医療現場の崩壊をまねく
まずは胸部単純X線写真でしょうね。
病院にみんな押し寄せると免疫の弱い患者や高齢者に感染を広げてしまうし、病院内で集団感染を引き起こしかねない
早期の治療法確立に期待
一部報道によると、喘息の治療に使われるシクレソニド(商品名:オルベスコ)の吸入が有効のようですので、もし有効であれば肺炎患者さんの早期回復や重症化の回避に使えると良いですね。
はやくコロナウイルス感染症 新型肺炎 が収束しますように。
最後まで読んでいただきありがとうございました。